自然科学書出版  近未来社
since 1992
 
上手な本の作り方  Q&A

まえがき

 本書は,私がこれまでの編集仕事の中で受けてきた質問や,前著『これからの自費出版〈虎の巻〉』を読まれた方からの問い合わせの内容などを参考にして目次をまとめました。全章を通して,本作りの流れに沿った想定問答集のような展開になっていますが,とりわけ下段に設けた「ト書き」についてはかなり細かい事柄について補記してあるため,軽く読み飛ばしていただき,上段の本論部分をしっかり読んでいただければ幸いです。

 項目数は50個になりましたが,「1項目2ページ見開きにまとめる」という紙幅上の制約を課したこともあって,中には十分な説明責任を果たしていない解説もあるかも知れません(Q7とQ48は問題の複雑さから4ページです)。読者諸兄姉からのご意見とご叱正をお願いいたします。また,たとえ限られた紙の上での解説ではあっても,一人でも多くの方々に本書を読んで頂くことで,あなたの「貴重な時間とお金を守る自費出版=本作り」に繋げていただければ,著者としてこれ以上の喜びはありません。
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 『上手な本の作り方』というタイトルを見られて,本書が本作りに関する専門的な話で詰まっているのではないかと思われた方もおられることでしょう。しかし,決してそうではないのでご安心ください。確かに,本書の解説の幾つかでは,本作りの一部についてかなり詳しく書いているところもあります。しかし本来,本作りとは,本を作りたいと考えている人それぞれの個性や感性に拠ったかたちで自由に作っていかれるのが理想であり,「ここはこうしなければならない」というような型にはまった取り決めなどは何一つないのです。また,そうであるからこそ,本作りは面白いのかも知れません。
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 私は,「自装出版」こそが本作りのあるべき姿であると考えています。業者さんから一枚一枚服を着せてもらって本を作っていくのではなく,自ら進んで服を着せていくくらいの気概を持たれた本作りを目指してこそ,高額なお金を負担していく価値も生まれてくるのです。そして,この考え方をさらに進めていけば,おそらく「本作りは誰にでもできる仕事である」ということになっていくのではないでしょうか。40年という時を超えて出版の世界を見続けてきた私の個人的観想は,まさにこの一語に尽きるのです。そして現在,私と同じ仕事に就いておられる若い方々にもぜひ読んでいただき,一つでも多くのことを得られ,仕事に活かしていただければと切に希望します。

 どうか,「本作りは難しいもの・面倒くさいもの」と決めつけてしまわれるのではなくて,ご自身でできることは業者さんや専門家の方の力を借りることなく着実にこなされ,内容的にも経済的にも納得できる「楽しい本作り」にしていただきたいものです。そして,あなたの本が無事出来上がることを祈念して,ここに拙筆を再び措かせていただきます。

 2018年(平成30年)2月吉日
著  者