近未来社
■岩盤破壊音の科学
本書の刊行によせて

 著者の石田さんとは同門である。京都大学工学部の同じ学科,同じ研究室に所属し,主としてRock Mechanicsを学んだ。私は石田さんが研究室に配属される以前に山口大学に配置替えになったので,同時期に同じ研究室にいたことはないが,共に平松良雄先生と岡行俊先生の薫陶を受けた。私は修士課程修了直後から助手として両先生に仕えたので,Rock Mechanicsのほかに平松先生の研究の原点であったVentilationに関する仕事にも従事したが,石田さんは一貫してRock Mechanicsに焦点を定め,岡行俊先生の指導を受けて博士課程に学ぶことで課程博士になることをめざしたようである。「ようである」というのは,今でも彼の研究室の戸棚には岡先生の遺影が置かれていて,先生に対する彼の敬慕の念が窺がえるからである(岡先生は,石田さんが博士課程に進学した年の9月18日に何の前ぶれもなく脳卒中のために倒れ,53歳の若さで帰らぬ人となった)。

 岡先生が亡くなったことで,当時の門下の研究者(現在は電中研:日比野敏理事,鳥取大:木山英郎教授,水田,京大:斎藤敏明教授,資源環境技術総合研究所:厨川道雄所長,熊本大:菅原勝彦教授,長崎大:棚橋由彦教授,建設機械化研究所:亀岡美友研究第3部部長,石田)は目標を失ったことに,また平松先生が定年退官されたあとは,自分たちにとっての重要な拠点を失ったことに気づかされた。しかし,彼らはそれぞれの位置でそれぞれに業績を築いてきた。もちろん,石田さんもめげずに初志貫徹に努めてこられた。

 石田さんは博士後期課程を1年で中退して,(財)電力中央研究所に移られたが,電中研での研究と合わせて,学位論文「岩盤内の初期地圧状態に関する研究」をまとめ,平成元年3月に京都大学より工学博士号を取得された。主査は岡先生が亡くなったあとの研究室の担当教授(当時)であり,また資源工学科での恩師である寺田孚先生であった。

 学位論文のテーマ「岩盤初期地圧」は私の主たる研究テーマの一つでもあるので,彼が山口大学に移ってこられてからは初期地圧測定に関する研究を共同して行ってきた。彼がそれまでに関わってきた京大式応力解放法,電中研式応力解放法およびAE法による地圧測定から一転して,水圧破砕法や2面破砕法による地圧測定に関連した実験を行った。これらの実験のいくつかは,あとで述べるように,AE測定につながっている。また,アブレシブ・ウォーター・ジェット支援の水圧破砕による地圧測定に関する原位置実験も共同して行った。最近では,乾式一面破砕法という新しい地圧測定法の適用性について検討するための基礎実験や境界要素法を用いた数値シミュレーションを行っている。この実験においても,AE計測の利用が試みられている。

 三つの研究機関における研究を通じて,幅広く地圧測定に関わった実績をもとにして,分かり易い指南書をまとめれば,岩盤工学において欠かすことのできない地圧測定に役立つことになると思われるので,いつの日かそれを一冊の本として刊行して頂きたいものである。

 一方,高温岩体発電に資するための研究についても,豊羽鉱山や神岡鉱山の坑内で実施した一連の実験を含めて,石田さんとは協力し合ってきた。石田さんは過去20年近くにわたって,岩盤の破壊音を測定することにより,岩盤の破壊の予知や予測を試みる仕事に,また破壊のメカニズムを研究する仕事に携わってこられた。このことは本書のまえがきで述べられているが,本書の第5章に記されているように,AE計測は高温岩体発電に関連した要素技術として利用されており,また水圧破砕法による地圧測定の高精度化に利用できる可能性がある。岩盤は透けて見えないが,AE計測技術を通じて岩盤内の構造変化をみることができるわけである。本書が多くの建設関係者の方々に読まれることを期待するとともに,AE計測技術のさらなる向上と石田さんのますますの発展を祈る。

1999年3月 水田 義明(山口大学教授)

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