近未来社
新刊書紹介  ■千木良雅弘:写真に見る 地質と災害−応用地質の見方・考え方−
「地すべり学会誌」書評(2016 Vol.53 No.5,216p)
 著者の千木良先生は,これまで近未来社から1995年の「風化と崩壊」や1998年の「災害地質学入門」からはじまり2013年の「深層崩壊−どこが崩れるのか−」まで多くの崩れと災害に関する専門書を出版してきた。ところが本書は,従来の読ませるスタイルの専門書とまったく異なり,カラーの現場写真とその解説からなる見せる入門書というスタイルで出版した。またすべて1ページ1主題で読みきりになっていることから,大変見やすく読みやすい。さらに地質の難しい用語を知らない人にも災害現象とその原因が理解できるようになっているし,かつ災害や地質の専門家にとっても勉強になる解説が各所にちりばめられている。著者の地質と災害に関する熱い思いをまえがきの一節から抜き出すと次のとおりである。
 「我が国は世界で最も地質災害を受けやすい国の一つであり,先進国の中ではまぎれもなく世界一です。一方,ヨーロッパの国々や北アメリカの大部分は日本と比較にならないほど安全です。そのような国の防災教育システムをそのままもってきても,我が国にはミスマッチなのです。災害対策に膨大なお金をかける前に,まずは,相手を良く知って危険から逃げることが得策なのです。実際に災害の対策にかかわる人,意思決定をする人,このような人たちに是非とも地質的見方を知ってほしい。地質学は決して夢物語の好きな人だけのものではない。こんなことがいつも私の頭の中を巡っていました。」
 著者は,目次構成にあたり,大地の悠久な営みを理解して,その流れの中で生じる地質現象が災害を発生させるということを理解してもらうために,次のような構成としています。(太字は書籍の目次,斜体は著者が「まえがき」で追加している解説文)。

第1章:山を崩す
第2章:山を崩す原因となる地中の水
第3章:山を崩す原因となる
第4章:土石を山から川へ
第5章:山を刻んでいく川の侵食の様子
第6章:氷河が山を刻んでいく様子
第7章:土砂が川から海へ
第8章:の侵食
第9章:風の働き
第10章:地質の構造
第11章:火山
第12章:地中の熱
第13章:地震
第14章:岩石の風化

 本書の各ページをパラパラめくると多くのカラー写真に圧倒される。とくに中国や台湾をはじめヨーロッパアルプスなど海外の美しい写真には思わず目をうばわれる。私(筆者)も海外の調査体験の多さをいささか自負していたが,著者に比べれば半分にもみたないであろう。著者は,これらの写真についてつぎのような言葉で締めくくっている。
 「教科書や論文には人が考えたことしか書いてありません。一方,自然そのものを見れば,十人十色かもしれませんが,きっと人が気づかない新鮮なことが見えるかもしれません。これは,地質学を勉強している人でも,まったく門外の人でも同じです。まだまだわからないことは多いのです。でも実物に触れれば,いままでと違った考えが湧いて,今までの障害を乗り越えられるかもしれません。本書の中の写真にこんな楽しさを感じていただけたなら,大変うれしく思います。」
(中筋 章人)
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