近未来社
新刊書紹介  ■千木良雅弘:写真に見る 地質と災害−応用地質の見方・考え方−
「深田研ニュース」書評(2016 144, 5p)
本書を手にとって,私はドキッとしました。ワインレッドの表紙を飾る写真は2008年岩手・宮城地震による地すべりの影響で落下した祭畤(まつるべ)大橋ですが,あたかもこの本の出版直後に発生した熊本地震本震(2016年5月16日)で大崩壊とともに落下した阿蘇大橋を暗示するかのようだったからです。我々が住んでいる日本列島はまったく休むひまなく活動していることを,最近,つくづく実感しているのは私だけではないでしょう。この列島に住む限り,いいえ,地球上に住む限り,私達は限りなく活動を続ける地球の鼓動と折り合いをつけて生きていかねばなりません。
 本書は我々がこの活動的な地球の活動を理解して,いかに住み続けて行くかの指針の一端を(著者はそこまでは言及されていませんが)示していると云えましょう。近年の日本をはじめ世界中の災害地の多くを積極的に調査された,著者ならではの,現地の地形や地質が分かりやすく美しい貴重な写真,鋭くも暖かい眼差しで観察された説明文,それに加えて一般の方々の理解を深めていただけるように,専門用語の解説も適切に加えられています。多くの写真は著者ご自身が撮影されたものですが,他の研究者や機関による写真・画像も加えられ,全体としてのバランスもよく工夫されています。著者はパラパラと頁をめくって写真を見ていただいて地形や地質に関心をもっていただければ,文章は副としてついでに目を通していただければ,とされています。とはいえ,文章もできるだけ易しく心がけておられ,丁寧に書かれています。
 ところで,本書は各頁の読み切りとなっていますが,全体として14章構成であり,また大まかには,前半の1〜7章で山地から海へ至る区間での崩壊・地すべりの全体像が提示され,後半8〜14章では地殻とくに地表に働く営力に力点が置かれています。すなわち,第1章:山を崩す,第2章:地中の水,第3章:雨,第4章:山から川へ,第5章:川の侵食,第6章:氷河,第7章:川から海へ,第8章:海,第9章:風の働き,第10章:地質の構造,第11章:火山,第12章:地中の熱,第13章:地震,第14章:風化,となっています。
 写真・図表は合わせて388葉からなり,しかもほとんどカラー,そのうち主役である写真はおよそ8割,要所に説明図があるので一般の方々にも理解しやすいでしょう。最後に,著者の言葉のごく一部をお伝えします。「学習や研究の面白さは,自分で見つけて,自分で考えて,自分でやってということだと思います。……本書の写真も図も,子供が初めて出会うものをじっと見つめる気持ち−なんだか懐かしい気もますが−そんな気持ちを持って見ていただけたなら大変嬉しく思います。……」
 ぜひ,皆さまもこの本をお手に持ってご覧いただきたいと思うものです。

(大八木規夫(公益財団法人 深田地質研究所/特別研究員)
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